あおくてまあるい、わたしの星
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整理したらでてきた一年前くらいに書いたものを、推敲せずにぼーんとのっけときます。またいつか推敲しようそうしよう。いつかっていつだろう←
おもいっきり季節外れです。今の時期でも季節はずれですが、これを書いたのは思いっきり季節外れの5月です。←
わたしはあなたのこと、すごく、大切にしていたのに。
お母さんは子供のわたしに、
「大切なものを大切にしていたら、きっとかみさまはそれをとりあげたりはしないわ」
と幾度となく言い聞かせていた。あの言葉に忠実に、今まで生きてきたというのに。
あなたは交通事故で死んでしまった。クリスマスイブなのにね、今日は、特別な日なのにね。胸が苦しくなる。あなたはわたしなんかといて、楽しかったのだろうか。
部屋に転がったいくつもの空になったお酒の瓶。なかには高級の赤ワインも混ざっている。赤みを帯びた頬とは裏腹に、心のなかは冷え切っていて、それをお酒を飲んでごまかそうとする自分が哀れでならない。それでも、飲むことをやめることはできなかった。それをすることでしか、今夜の憎しみにもにた感情をおさえられない。
頭がぼうっとするわたしの耳に、すっきりと、ぴんと張った、インターホンの音がまっすぐ入り込んできた。このなまぬるいようで冷えた空間を壊してあげよう。そんなことを主張するかのように。
わたしはソファーから腰をゆっくりとあげ、そのインターホンを押した指をもつ相手のもとへよたよたと歩み寄った。相手を確認せず。ドアをあける。
「メリークリスマス。今宵は聖なる夜ですよ」
あなた、誰ですか。と冷めた目で目の前の相手に言い放ち、ドアを急いで閉めた。しかし相手はすかさずドアの隙間に手をいれ、ドアを開けようとドアの縁をつかんで引っ張る。なにせ、目の前のインターホンを押した主は、トナカイの着ぐるみを着た人物だったのだから。
「私は、あんたに話をしてやろうとやってきた。」
ドアを閉めようとする腕にいっそう力が入る。
「おかしな勧誘のしかたね」
わわわ、と向こう側で相手があわてている。
「決してあやしい勧誘ではないから。あんたに個人的にはなしがあるんだ」
トナカイの着ぐるみを着ているせいでくぐもった声なのに、どこか凜とした響きがある。
「あなた、わたしの知り合い?」
こんな訪問の仕方をする人も、こんなはっきりとその場から浮かび上がるような存在感を放つ人も、自分の知り合いには心当たりがなかったが、一応尋ねてみる。
「うーん、まあそうですね。あんたは私を知ってます。」
曖昧な返事をうけとり、どうきりかえそうか迷っていたとき、奴は昔話し調で話しはじめた。
「あるところに、ふたりの男女がおりました。女は男に惚れ込み、告白をしました。恋愛に不慣れな女は、友達に応援されて、はじめての告白を試みたのです。しかし、そう簡単にはいきませんでした。男は女からの告白を断りました。そしてある日から、あろうことに女の恋を応援していた友達はその男を口説き落とし、寄り添うようになったのです。女は毎晩、男を想って泣きました。友達だったのにと泣きました。それから一年がたち、男は自分のつきあっている女が浮気をしていると風のうわさでききました。うろたえる男をなだめたのが、あの女でした。大丈夫、あの子は簡単に浮気をするような子じゃないわ、と。男は心底おどろきました。手ひどい裏切りをうけてなお、あの友達をかばうような行動に出るとは。なんて心のきれいなひとだろう。男は、浮気こそしてないものの、別の男をたぶらかすような振る舞いをしていた女と縁を切りました。そして、こころのきれいな女と、寄り添うようになったのです」
どうですか? と聞く語り手も、あふれる感情で頬をぬらすわたしも、もうドアを引き合うことをしていなかった。
わたしは嗚咽をこらえながらも、情けない声でたずねた。
「それで、男は、しあわせだった?」
あまりにも、その話が自分と思い人の思い出に酷似していて。わたしはたずねる。
「男は、わたしなんかといて、楽しかったの?」
彼はとても幸福そうな声で、
「もちろん」
と答えた。そのくぐもった声さえも、物語にでてきた男にそっくりに思えた。きっと錯覚。
「おれはきみといられて、とてもとても、しあわせだったよ」
え? どういう意味、と言うと同時にドアを開ける。どうしても、その着ぐるみの頭を、脱いでほしくて。顔が見たくて。もしかしたら、なんて。
けれども、トナカイはもうそこにはいなかった。今の今まで話していたのに。すると、どこからか声が響く。
「あとはきみがしあわせになってくれれば、それで」
どこから? どこにいるの? エレベーターに向かうが、ランプは一階を表す一点でとまっており、階段をかけおりてマンションの外を見回したが、トナカイの着ぐるみを着た人物などは見あたらず、ただただ町のクリスマスを意識したイルミネーションがあちらこちらで浮かび上がっているだけだった。
あとから聞いた話、彼はわたしにクリスマスプレゼントを贈るため、わたしと会う一時間前までバイトをしていたらしい。そこからここに向かう途中に、車にはねられたのだそうだ。そのバイトは、この季節に似つかわしい格好をする、バイトだったそうだ。
クリスマスイブは、わたしたちのつきあい始めて一年の、記念日。
お母さんは子供のわたしに、
「大切なものを大切にしていたら、きっとかみさまはそれをとりあげたりはしないわ」
と幾度となく言い聞かせていた。あの言葉に忠実に、今まで生きてきたというのに。
あなたは交通事故で死んでしまった。クリスマスイブなのにね、今日は、特別な日なのにね。胸が苦しくなる。あなたはわたしなんかといて、楽しかったのだろうか。
部屋に転がったいくつもの空になったお酒の瓶。なかには高級の赤ワインも混ざっている。赤みを帯びた頬とは裏腹に、心のなかは冷え切っていて、それをお酒を飲んでごまかそうとする自分が哀れでならない。それでも、飲むことをやめることはできなかった。それをすることでしか、今夜の憎しみにもにた感情をおさえられない。
頭がぼうっとするわたしの耳に、すっきりと、ぴんと張った、インターホンの音がまっすぐ入り込んできた。このなまぬるいようで冷えた空間を壊してあげよう。そんなことを主張するかのように。
わたしはソファーから腰をゆっくりとあげ、そのインターホンを押した指をもつ相手のもとへよたよたと歩み寄った。相手を確認せず。ドアをあける。
「メリークリスマス。今宵は聖なる夜ですよ」
あなた、誰ですか。と冷めた目で目の前の相手に言い放ち、ドアを急いで閉めた。しかし相手はすかさずドアの隙間に手をいれ、ドアを開けようとドアの縁をつかんで引っ張る。なにせ、目の前のインターホンを押した主は、トナカイの着ぐるみを着た人物だったのだから。
「私は、あんたに話をしてやろうとやってきた。」
ドアを閉めようとする腕にいっそう力が入る。
「おかしな勧誘のしかたね」
わわわ、と向こう側で相手があわてている。
「決してあやしい勧誘ではないから。あんたに個人的にはなしがあるんだ」
トナカイの着ぐるみを着ているせいでくぐもった声なのに、どこか凜とした響きがある。
「あなた、わたしの知り合い?」
こんな訪問の仕方をする人も、こんなはっきりとその場から浮かび上がるような存在感を放つ人も、自分の知り合いには心当たりがなかったが、一応尋ねてみる。
「うーん、まあそうですね。あんたは私を知ってます。」
曖昧な返事をうけとり、どうきりかえそうか迷っていたとき、奴は昔話し調で話しはじめた。
「あるところに、ふたりの男女がおりました。女は男に惚れ込み、告白をしました。恋愛に不慣れな女は、友達に応援されて、はじめての告白を試みたのです。しかし、そう簡単にはいきませんでした。男は女からの告白を断りました。そしてある日から、あろうことに女の恋を応援していた友達はその男を口説き落とし、寄り添うようになったのです。女は毎晩、男を想って泣きました。友達だったのにと泣きました。それから一年がたち、男は自分のつきあっている女が浮気をしていると風のうわさでききました。うろたえる男をなだめたのが、あの女でした。大丈夫、あの子は簡単に浮気をするような子じゃないわ、と。男は心底おどろきました。手ひどい裏切りをうけてなお、あの友達をかばうような行動に出るとは。なんて心のきれいなひとだろう。男は、浮気こそしてないものの、別の男をたぶらかすような振る舞いをしていた女と縁を切りました。そして、こころのきれいな女と、寄り添うようになったのです」
どうですか? と聞く語り手も、あふれる感情で頬をぬらすわたしも、もうドアを引き合うことをしていなかった。
わたしは嗚咽をこらえながらも、情けない声でたずねた。
「それで、男は、しあわせだった?」
あまりにも、その話が自分と思い人の思い出に酷似していて。わたしはたずねる。
「男は、わたしなんかといて、楽しかったの?」
彼はとても幸福そうな声で、
「もちろん」
と答えた。そのくぐもった声さえも、物語にでてきた男にそっくりに思えた。きっと錯覚。
「おれはきみといられて、とてもとても、しあわせだったよ」
え? どういう意味、と言うと同時にドアを開ける。どうしても、その着ぐるみの頭を、脱いでほしくて。顔が見たくて。もしかしたら、なんて。
けれども、トナカイはもうそこにはいなかった。今の今まで話していたのに。すると、どこからか声が響く。
「あとはきみがしあわせになってくれれば、それで」
どこから? どこにいるの? エレベーターに向かうが、ランプは一階を表す一点でとまっており、階段をかけおりてマンションの外を見回したが、トナカイの着ぐるみを着た人物などは見あたらず、ただただ町のクリスマスを意識したイルミネーションがあちらこちらで浮かび上がっているだけだった。
あとから聞いた話、彼はわたしにクリスマスプレゼントを贈るため、わたしと会う一時間前までバイトをしていたらしい。そこからここに向かう途中に、車にはねられたのだそうだ。そのバイトは、この季節に似つかわしい格好をする、バイトだったそうだ。
クリスマスイブは、わたしたちのつきあい始めて一年の、記念日。
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